世の中幸せも不幸せも認識次第であると誰かが言った.
そうかもしれない.
その価値観は確かにフェイクであり,勘違いであり,慰めであるだろう.
でも,この退屈な私の日常においては,その偽りこそが確かに事実なのだろうと思う.
ずっと捜していた.壊れた理由.
ふと気づいたトキに,私は自分の位置が掴めなくなっていたのだ.
それまでそこにあった当たり前の環境.
手にしていたありふれた自由.
幼稚なわがままに微笑み返してくれる大好きなあの娘.
当然のことのように過ごしていたありふれた日常に,私はなんの疑問も抱いていなかった.
疑問を挟む余地などないほどに,日々を過ごす喜びと刻々と刻まれるその想い出に,
私は心から満足をしていのだ.
だから,それがなにを意味しているかなんて一度も考えたことなどなく,
脆く崩れ去っていく現実に,泣き叫びながら助けを乞うた.
抵抗する相手も見えず,守る手段を知らず,逃げる路さへ見えなかったから...
どうしてそのようなことが起こるのか私には理解できなかった.
何故昨日まで意識することなくできていたことに足が震えるのか.
周りから友達が減り,描いた夢が欠け,微笑んでくれたあの娘が落胆の表情を浮かべる,
そのトキその度に,失ったものに気づいて自分が手にしていたものの重みを知った.
これは悪夢なのだろうか?それもすこぶる性質の悪い・・・
悪夢であったとしても震えながら涙を流さずにはいられないのに,
それが現実であれば,小さな不幸さへ予測していなかった私に耐えきれるはずもなく,
そして私は壊れていった.
目に映るこの日常に形作られる,淀んだ世界.
なにもかもが間違ったことであり,救いのない不協和音.
大切な10代のもっとも夢を見るトキに私の瞳には陰しか映らず,
たったひとつの望みは昔の自分への帰郷.
将来を描くことなどできず,一歩前の未来さへ疑心暗鬼な中で,
ひたすら過去の夢見心地な風景と,自分の居場所を求め続けた.
救いは過去になど存在しないと知らずに.
見つけた過去に戻れる術を持たないことを理解できずに...
風になれると勘違いして夏の夜に舞い散った400cc.
好意にさへ疑心暗鬼な瞳を向けずにはいられなかった.
言葉にならない想いを抱えて空っぽな笑顔を浮かべ続けた歳月.
この残り少ないひとときに私のすべてを刻んでみたい.
私の文章を素敵な笑顔で褒めてくれたあなたを想い出して.